アマンの森の物語

Amanemu Forest

ホテルジャーナリスト せきねきょうこ

アマンの森の物語

日本の森林面積は2505万ヘクタール、これは国土面積の67%を占めると言われます。日本が立派な森林大国として、世界の先進国中ではフィンランドに次ぎ世界第二位であることはあまり知られていません。プーケットに始まって以来、アマンは、この美しい緑の島国日本に誕生することを長いこと熱望していました。私は海外旅の帰国の度に、飛行機が降下を始めると見えてくる山や森や田園風景を俯瞰し、緑に覆われた自国の風景を誇り、一方で外国人観光客が、この異国の印象を「緑が美しい国だ」と感動的に語る人々に何度も出逢いました。アマンは夢を叶え、森の広がる特別な場所にすでに3か所、それぞれが自然と共存しています。森の再生、原始森の保護、新たな森への取り組みなど、環境デザインの専門家らと共に、未来に向かうアマンは「自然に寄り添うアマン」の主旨を貫いています。今回は、アマンと共にあるそれぞれの‘森’について紐解いていきましょう。

(森林面積参照:国連食料農業機関(FAO))

大手町の森

日本のビジネスの中心地である東京大手町エリア。そのモダンな高層ビルの33階にロビーを構え、世界初の都市型アマンとして誕生したアマン東京は、開業からすでに8年が過ぎました。常に手つかずの自然と共にある秘境のリゾートとして知られたアマンですが、大都会に誕生したのです。しかし、アマン東京の入る建物1階には、人の手が行き届いた周辺の植栽や並木道とは明らかに違う、野趣あふれる自然の森‘大手町の森’が寄り添うように広がっています。アマン東京はその森の息吹に守られ静かに時を積み重ねているのです。

 

アマネム誕生の秘話

1988年、タイのプーケットに初めて「アマンプリ」が誕生して以来、世界中の秘境や手つかずの自然の中に、または人里離れた美しい場所に、アマンは次々と誕生してきました。日本で2軒目のアマンが噂になり始めた頃、人々は秘密裏になっていたその‘楽園’を探し求め、やがて、リアス式海岸の穏やかな伊勢志摩の英虞湾に突き出た緑濃い台地だとわかりました。当初、現場を訪れたアマン創業者は、2日間をかけて敷地内をくまなく歩きまわり、「ここには昔のままの平和で静かな日本がある」と熱い思いを吐露したと言います。そしてアマン史上初の温泉リゾートとなった唯一無二のアマン、「アマネム」が誕生したのです。

 

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森に包まれる秘密の庭

世界遺産の古都、京都。観光客で賑わう町中を離れ、左大文字山から連なる鷹峯三山の麓に向かうと、そこには静謐な森に覆われるアマン京都があります。アマン京都の舞台はまさにこの森の庭。かつて「紙屋川庭園」と呼ばれたこの地は、前所有者であった西陣織の「浅野織物」が3代にわたって造り続けてきた庭です。従来の日本庭園とは異なる斬新なデザインは、まるで古代遺跡の中に迷い込んだかのような世界へと誘います。建築家ケリー・ヒルは約20年も前にこの庭に出逢い感性が震え、当時、アマンの創業者に‘アマンに相応しい場所’と説いたのです。その時から20年、アマン京都は2019年に開業に至りました。